板山不動尊

“ 静謐な洞窟にたたずむ、
お不動様と石仏群 ”

[目 次]
1.集落をひっそりと見守る不動尊
2.板山集落と不動尊の歴史
3.8月10日の “十日夜” 祭
4.不動尊の美味しい岩清水

集落をひっそりと見守る不動尊

 国道253号の大島区大平の交差点を過ぎ、登坂車線の途中、県道13号を左に曲がって旭地区に入ると、最初に現れる集落が「板山」です。

 小山建設の交差点を右に曲がると、すぐに橋のたもとに立つ「不動尊」の文字が目に飛び込んできますが、道路上からは看板がいくつか見えるだけで祠やお地蔵様のようなものは見当たりません。もし時間に余裕があるようなら、駐車場に車を停めて、是非お不動様のところまで行ってみましょう。

板山不動尊へ
板山不動尊へ

 川にかかる小さな橋を渡り、夏でもひんやりとした空気のなか足を伸ばしてみれば、初めて訪れる人はだれもが驚きの声を上げるスポットが待っています。


 まず杉の木立のむこうに見えてくるのが滝の姿。不動滝と呼ばれています。落差は大きくはありませんが、周囲をうっそうとした緑に囲まれ、特に雪解け期の春先は轟轟と水を落としています。

緑のなかの不動滝
緑のなかの不動滝

 そしてさらに歩を進めると、その横に、滝の音がフィルターに遮られたように静寂につつまれた半月型の岩窟があるのに気がつくでしょう。初めて訪れた人の「あっ……!」という小さな感嘆の声が聞こえます。

 左手には馬頭観音の石仏(あるいは庚申塔?)、右手には不動尊の由来を記した案内板。そして正面には、昔むかしに水の流れに抉られてできた高さ1.5mほどの半月型の岩洞窟。その中に、お不動様(不動明王)の祠と、祠をとり囲むように安置された百体以上の石仏が並んでいるのです。

 手を合わせて拝んだら、是非洞窟のなかにも入って、石仏様のお顔もご覧になってみてください。年月による風化のためか、彫りが分かりにくくなっているものも多数ありますが、一体一体同じものはありません。

不動滝とお不動様の岩窟
不動滝とお不動様の岩窟

 古くは修験者が修行をおこなったという謂れもあり、戦後しばらくまではお盆頃になると東頸城一帯から参詣者を集めたそうですが、今では訪れる人も少なく、いつもひっそりと集落や地域を見守っています。

板山集落と不動尊の歴史

「この板山集落は保倉谷においては最も古い集落の一つであり、月の岩屋不動尊や小海の池等の伝説に包まれた土地と言えるが、江戸時代以前の記録はほとんど発見されていない。」

『大島村史』(平成3年 大島村教育委員会発行)から

 手元にある分厚い『大島村史』を紐解いてみると、「板山」という集落名は少なくとも室町時代には文献・絵地図には見ることができ、その中に「不動岩屋」や「行者の岩屋」という文字も登場するそうです。そのさらに昔は近くの「小海の池」のあたりに集落とお寺があり(小海村や岩谷山滝音寺との記載がある)、大きな山崩れで多くの家が埋まってしまってから、集落と不動様が現在の場所に移されたという伝承が残っています。

 平成9年に閉校となった旭小学校の『閉校記念誌』には、板山集落の古い写真として「不動尊での奉納相撲」が載っています。『村史』にも、昭和30年頃までは毎年お盆の十六日に寄せ相撲があったと記されており、往時の賑わいぶりが想像できますね。

『旭小学校閉校記念誌』より
『旭小学校閉校記念誌』より

 お参りする人は昔に比べれば寂しいほどに減ってしまった不動尊ですが、現在でもお盆になると、板山町内会で十日夜のお祭りをしています。

8月10日の “十日夜” 祭り

 年に一晩だけ、板山不動尊が輝く日があります。それが毎年8月10日の “十日夜(とおかや)” です。

 数日前から不動尊に降りてゆく階段と小道には提灯が下げられており、当日あたりが暗くなったら、その灯りを頼りに奥に進んでみましょう。すると洞窟内にあるお不動様とお地蔵様のすべて一体一体にロウソクが灯されており、暗闇のなか半月型の岩窟が言葉に表せない荘厳さで浮かびあがっています。

十日夜に浮かび上がる板山不動尊
十日夜に浮かび上がる板山不動尊

 お不動様前の広場には、幾人かの写真愛好家の姿もあるものの、他はほとんどが板山集落の住民や夏休みで帰省しているその親戚たち。老若男女、みんなでロウソクに火を灯してお不動様に参拝したあとは、橋のたもとの広場(おそらく、上の奉納相撲が行われていた場所かな?)で手持ち花火や打ち上げ花火を楽しむのが恒例となっています。

 年に一回だけの特別な夜の光景。機会があれば是非一度、本物の情景を観にいらしてください。

( ※ 提灯やロウソクの灯りがあるとはいえ、足下はかなり暗いので、事前に一度は明るい時間帯に来訪しておくのがお薦めです。)

不動尊の美味しい岩清水

 そうそう。おまけ、でもないですが、不動尊の駐車場の奥には「板山不動尊の水場」があって、一年を通じて冷たくて美味しい水が出ています。水量は多くありませんが、最高気温が30度を超えるような夏の暑い日でもボトルに汲めばすぐに表面が結露するほどの冷たさで、よく近隣の農家が野良仕事ついでに水を飲んでいったり、近くの現場で働いている作業員が昼休みに涼みにきたりしています。

板山不動尊の水場
板山不動尊の水場

 板山不動尊を訪ねてきた折には、是非一杯ここの岩清水で喉を潤していってみてください。きれいな公衆トイレもありますので、旅の道中ちょっと一休みするのにも、ちょうど良い場所ですよ♪

スポット情報
『板山不動尊』
住 所新潟県上越市大島区板山
期 間春~秋(冬期間、小路の除雪なし)
駐車場6~7台ほど
設 備トイレ(冬季閉鎖)、湧水(飲用可)、自動販売機
備 考毎年8月10日の夜に「十日夜」のお祭り
(提灯、ロウソクによるライトアップ)
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